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No.5 ワイズのファンドをウォッチング [Y'sdom Watching]

▼ファンド事業あれこれ
 毎年この季節になりますと、北海道十勝平野から、じゃがいもが届くのが待ち遠しい人もおられる事と思います。ご存知十勝クラブの「じゃがいもファンド」です。そんなことで、今回は「ファンド」についてウォッチしてみました。
 現在、東日本区内で物品を販売し、その収益で何らかの事業活動(いわゆるファンド事業)を行っているクラブは、私の知る範囲では以下の通りです。(十勝のじゃがいもを仕入れて販売している例は除く)
北見クラブ…サーモン
十勝クラブ…じゃがいも・かぼちゃ
もりおかクラブ…りんご・わかしお石けん
川越クラブ…さつま芋(紅あか)
所沢クラブ…狭山茶
東京クラブ…甲州ワイン
東京コスモスクラブ…はちみつ
東京たんぽぽクラブ…梨
東京八王子クラブ…山野草
松本クラブ…土佐文旦
沼津クラブ…アジの干物
 (以前、東京世田谷クラブで「日光の湯葉」、御殿場クラブで「緑茶」を扱っていましたが、現在は休止しています)
 これを見るとほとんどが食品で、その地域の特産品です。ワイズの扱う食品だけで我が家の食卓を満たしてくれそうです。
 松本クラブの「土佐文旦」は、メネットの出身が高知で、文旦農家と縁がある関係からです。
 川越クラブの「紅あか」は、亡くなられた工藤徹さんが、かつてワイズのメーリングリストで毎年正月に話題になった、箱根駅伝の順位予想の景品として提供されていたことを思い出します。工藤さんの“営業活動”の一環でした。
 もりおかクラブの「わかしお石けん」は、岩手県の漁業協同組合で販売している洗濯石けんで、天然の成分だけで作られているため、川や海を汚さないエコ石けんです。
 これらの販売で得られた益金は、各クラブのCS(地域奉仕)やYMCAサービス、ユース活動等に使われています。
 私が所属するあずさ部を例にとると、松本クラブでは、アジアからの私費留学生を支援する「アジア賞作文コンクール」の資金に、東京たんぽぽクラブは、東京YMCAのLiby(居場所のない子どもたちの支援プログラム)をサポートするために、東京八王子クラブでは桜草や鷺草などの山野草を、「フラワーファンド」という名称で、地元の中央大学の学Y生とのプログラムに活用しています。
 西日本区のクラブでも多様なファンド事業が展開されていると思いますが、詳細は承知していません。京都キャピタルクラブのブリテンを見ましたら、「大山ハム」「ネクタイ」「パン」などというファンドの項目がありました。

▼原点はじゃがいも
 これらのファンド事業の原点は、十勝クラブのじゃがいもでしょう。
 「じゃがいもファンド」は1977年の同クラブのチャーター時から始まっています。初代会長の林育雄さんは、元々は京都パレスクラブに在籍していましたが、1974年に、夫人の実家がある十勝の本別町に転居して、北見クラブに移りました。その後、十勝に新しいクラブを作ろうという機運が盛り上がった時に、じゃがいもの販売を思いつき、全国のワイズに呼びかけました。
 『5トンコンテナに、10キロ詰めのじゃがいもが500袋から550袋入ります。1袋520円から550円程度でお渡しするので、YMCAのバザーなどでお売り下さい。1袋900円で売れば、10万円前後を働き出せます』という呼びかけに、広島、京都パレス、大阪河内、札幌の各クラブから注文がありました。

 その時の京都パレスクラブの会長だった岡本尚男さん(現・京都キャピタル)は、『自分たちのファンド事業にもして、CS活動やYMCAのためになる働きをしよう。そのことが林君を勇気づけ、十勝クラブ設立の役にたつのならばという、一石二鳥のアイディアが出て、実行しました』と述べられています。(十勝クラブ30周年記念例会講演)
 翌年(1978年)、その京都パレスクラブがホストした日本区大会のステージ上で呼びかけたところ、18クラブ、2YMCAへ合計104.6トンを販売しました。
 その後、引き取りクラブ数と販売量は拡大し、2012年6月現在、東日本区22クラブ、西日本区50クラブ、6YMCA、2教会が、「ポテト&パンプキンファンクラブ」になっています。
 しかし、今日まですべてが順調に推移した訳ではありません。その紆余曲折は「北海道YMCA百年史」に詳述されていますが、北の大地でたくましくワイズ活動を続けている十勝クラブだからこそ、乗り越えて来られたのでしょう。

 十勝のじゃがいもファンドをウォッチして感じたことが幾つかあります。
 まず、“よそ者”の発想。初代会長の林さんは道産子ではありません。外からの視点が、地元の人には気づかない発想を生み出すことは度々あります。
十勝ジャガイb.jpg

 次に、この事業がスタートした当初は、十勝クラブの会員自らが汗を流し、作業をしたということです。これこそ、ワイズにおけるファンド事業の原点だと思います。現在は、規模の拡大や会員数の変遷で、以前の様ではないようですが。
 さらに、十勝のじゃがいもを仕入れた各クラブは、その売り上げを自分たちのクラブのファンド事業にするという、二次的な効果をもたらしていること。これは全国に広がるワイズのネットワークを活用しているという、時代を先取りした仕組みを作り上げたという点でも評価されます。

▼ クラブの基金をウォッチング
 一方、事業とは別に組織を運営する上で、ある目的のためにお金を蓄えておく場合があります。いわゆる「基金」と言われるものです。たいていは経常会計とは別にして管理しています。ワイズでも多くのクラブが、基金制度を設けていることでしょう。
 基金の目的は様々ですが、私が所属する甲府クラブでは、「基金運営委員会」が、「基金運用規定」に基づいて運用しています。基金の目的は次のように定められています。
 基金は、経常会計予算では支出出来ない特定事項の出費に備えることを目的とする。
特定事項とは、次のものとする。
⑴ YMCAやクラブの発展のため特別に必要と思われる事業。
⑵ 災害等の緊急時における支出。
 また、その運用にも次のような一定の歯止めを具体的にかけています。
(1) 1件の拠出額の上限
(2) 年度内の拠出額の合計の上限
(3) 同一事業への継続的な拠出の禁止
 これまでに、昨年の東日本大震災の支援金、クラブ周年記念事業、新クラブ設立活動費の一部、区大会ホストの費用の一部、YMCA体育館のアスベスト除去費等に用いています。
 甲府クラブの基金の残高は、ここ数年100万円前後です。基金に適正金額というものがあるのかどうかは別として、大雑把な計算ですと、会員一人当たり25,000円(現在の会員数39人)、また経常会計の予算比率からすれば28%程度です。

 基金については、クラブによってその原資や規模、運用も様々でしょう。ブリテンに「ニコニコ」とか「スマイル」といった記述がありますが、例会での献金やオークションの売り上げ等をクラブの基金に充当しているケースがほとんどです。
 基金立ち上げのきっかけや名称も様々です。
 横浜クラブや、同クラブに縁のある、横浜とつかクラブや、厚木クラブでは、「ロバ献金」と称しています。ロバの貯金箱を使用したことが、名前の由来ですが、どうしてロバなのかは不明です。聖書の中に、ロバが出てくる場面がありますが、そういう影響からかも知れません。

羊.jpg
 東京まちだクラブも「ロバ」でしたが、同クラブの小山正直さんが、2002年にシドニーで国際大会があった時に、「羊」のティッシュボックスカバーを買い求めて、献金箱にしました。以来「羊」になったそうです。集金力アップの思惑から、紙(紙幣)を好む「山羊」と同じ仲間というので、「羊」にしたのでしょうか。
 宇都宮クラブの「シゲファンド」は、1988−1989年度に東部部長をされた上野繁三郎(シゲサブロウ)さんが、エルマー・クロウ賞を受賞したことを記念してクラブに寄付をされ、クラブではこれを元に基金をつくることになり、お名前の2文字をとって命名しました。これに似たケースは他にもあるのではないでしょうか。
 東京西クラブでは、例会後の二次会での釣り銭が始まりだったそうです。
 2010年の横浜国際大会への登録費の全額、あるいは一部を基金から拠出したクラブもあったようです。区や部の役員になった人に、活動費の一部として補助する例もあります。

▼東日本区の基金
 先に、甲府クラブには、「基金運営委員会」があり、「基金運用規定」がある、と記しましたが、東日本区においては、「東日本区ワイズ基金運営委員会」が「東日本区ワイズ基金運営規定」に基づいて運営しています。
 「運営」とは、団体などの機能を発揮させることができるように、組織をまとめて動かしていくことで、「大会を運営する」とか、文字通り「運営委員会」というような使われ方をします。
 一方「運用」は、「法律を運用する」というように、そのもののもつ機能を生かして用いること、活用すること、という意味で使われます。
 その意味からすると、東日本区では、基金の運用についての具体的な定めはない、ということになります。
 東日本区の基金=JEF (Japan East Y’s Men’s Fund)は、1997年に日本区を東西に分割する時点で、当時の財産(日本ワイズ基金)を会員数で配分したもので、1975年の熱海国際大会で生じた余剰金約900万円(アタミ基金)を、東西で等分したものを併せて2,500万円でスタートしています。
 これが、2011年6月末では約2,400万円の残高になっています。この間には、記念史出版、横浜国際大会、2000P(新クラブ設立運動)、東日本大震災支援金等に拠出されてきました。
 クラブの基金と区のそれとでは、性格も運用も微妙に違うと思いますが、どちらにしても尊い浄財の集積であることには違いありません。

▼国際の基金
 ワイズの国際レベルでの基金と言えば、次の3つが揚げられます。
(1) ASF=Alexander Scholarship Fund
(2) BF=Brotherhood Fund
(3) EF=Endowment Fund
 それぞれの説明は、ロースターの「ワイズ用語」に掲載されていますので、ここでは割愛しますが、ASFは、東日本区では、メンバー一人当たり500円以上の献金を奨励しています。2011年度は約45万円が集まり、その中から国際ASFへ9万円の支出をしています。
 BFは、東日本区では、メンバー一人当たり2,000円以上の献金を奨励しています。2011年度は、現金が約210万円、使用済み切手分が約35,000円でした。これも国際へ送金されていますが、日本の貢献度は極めて高いようです。
 使用済み切手は、重さ1kgあたり600円のレートで換金されています。毎年、東日本区大会で、収集上位のクラブが表彰されていますが、去る6月の伊東での区大会では、1位の仙台クラブは13kg(7,800円分)を集めています。
 EFは、「東日本区ワイズ基金」の国際版と言えます。

▼あとがき
 蛇足になりますが、数年前、各クラブのファンド事業の“商品”を集め、インターネット上で販売する、「ワイズネット市場」なるものを提案したことがあります。小さなクラブでは、物品販売も困難なこともありますので、あるクラブが窓口になって、販売活動を促進します。その売り上げの一部を手数料として得て、それをそのクラブのファンドにするという横着なものでした。十勝のじゃがいもとは違った意味でのネットワーク利用ですが、仮に今、これを実践したとしても、ファンドとして成り立つかどうかは、保証できません。
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